メディア・コミュニケーションの戦略・戦術設計に必要な最低限のスキルとは
コミュニケーションプランナーの松浦シゲキです。
今回は、「作り手」の戦略・戦術を作る上で必要なスキルについて話したいと思います。なんの戦略も戦術もないままにただ書きたいことを書くのではなく、きちんと持続可能な形で運営を行い、「作り手」を育てていくことが必ず必要です。
まず大前提として、メディアを考えるということは、「作る」ことよりも「伝える」ことに重きを置くということ。もちろん「作る」ことも大切ですが、いくら良いコンテンツを作っても「伝わらなければ」意味がない。それを強調する意味で、ここからは単に「メディア」ではなく、「メディア・コミュニケーション」という言葉を使っていきましょう。
さて、「伝える」を考える上で重要なのが、「受け手」「伝え手」「作り手」の3者の関係性です。
「伝え手」であるプラットフォームなどは、「作り手」が作ったコンテンツを「受け手」に届ける役割を担っている。だからこそ、「受け手」のニーズを的確に把握し、それに合ったコンテンツを「作り手」から調達し、「受け手」に届けるための最適な方法を設計することが求められるわけです。
そのために「作り手」は「受け手」が持つ以下のようなスキルも必要です。
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診断力
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丁寧さ
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第一印象力
それぞれ説明していきましょう。
「診断」に必要なスキルと、それをどこで手に入れたか
「作り手」の戦略・戦術設計に最も重要なスキルの一つ目が「診断力」。「受け手」が求めているものと、「伝え手」経由で提供しているコンテンツがマッチしているかどうかを見極める力のことです。例を挙げながら説明していきます。
私がこの「診断力」を身につけたのは、意外にもクイズの企画だったりします。
学生の頃からクイズが大好きで、作問して大会を開くのにハマってました。社会人になったあとですが、長寿クイズ番組「アタック25」で優勝したこともあるぐらい。
でも、クイズを作る面白さって、自分が面白いと思うことを問題にするんじゃなくて、いかに参加者に「おもしろい!」「なるほど!」って思わせるかどうかだと思っています。
その昔、メディア向けクイズ体験会というのをやってました。今年復活させたいなあ。
参加者のレベルに合った問題を出す。参加者が知っていることと知らないことをうまくミックスする。そうやって初めて、「受け手」が楽しめる企画になります。
これは言い換えれば、「受け手」のことをよく知って、そのニーズにあったコンテンツを届けるということ。
自分は、クイズ大会という「現場」を作ることで、「受け手」視点でモノを作るコツを学んだんだと思います。
また、診断力を上げるには、とにかく幅広い知識と経験がマストです。
テレビや新聞だけじゃなくて、旅行に行ったりグルメを堪能したり、いろんな人と話したり。自分の知らない世界にどんどん飛び込んで、新しい発見をする。
今って何につけてもパーソナライズが進んでいるから、多様な情報に触れるのがすごく大事です。視野が広いというのは、時代の変化を捉えるための強力な武器になります。
自分も、バイクの免許を取ったのをきっかけに、ソロキャンプの世界に触れてみたり、ピアノを習い始めたり、誘われればゴルフにもトライしてみたり。常に新しいことにアンテナを張っているつもりです。
「伝え手」を通じて「受け手」に届くコンテンツの企画を考えるコミュニケーションプランナーには、こういう感度の高さ、アップデート力が絶対必要だと思うんです。
自分の殻に閉じこもっていては、どんなに良いコンテンツを作っても、「受け手」のニーズとはズレてしまう。だからこそ、常に外の世界を見て、人の声に耳を傾けるのが大切なのです。
「診断力」はすぐには身につかない。日々のちょっとした実践の積み重ねでしか、磨かれていかないスキルだと思います。日々新しい「受け手」と出会い続け、コミュニケーションを重ねることでしか、人によって異なる「受け手」のニーズを捉えるセンスを磨くことはできません。「受け手」のイメージを持ってないのに、自分が伝えようとするコンテンツがどうして「受け手」にハマると言えるのでしょうか。
この章で例に示した出逢いはフィジカルな現場に限ってますが、ノンフィジカルな、たとえばXのタイムラインも現場のひとつ。たとえば、普通に生活していたら関わることが絶対にないようなアカウントをフォローするのもひとつの手でしょう。自分の思想信条にあわないアカウントもいいと思います。「そういう受け手もいるんだ」という実感を持つこと、「受け手」の多様さに思いをいたすことが大切です。
現場から学んで、視野を広げて、感性を磨く。そういう地道な努力をすることで、本当の「診断力」が身につくと信じています。
既存の「受け手」向け企画に必要なスキル「丁寧さ」と、それをどこで手に入れたか
新規ユーザーを獲得することも大切ですが、既存ユーザーを確実に維持することはより重要です。既存ユーザーの定着度が低ければ、いくら新規ユーザーが来ても、すぐに離脱してしまうだけです。
既存ユーザー向けの企画を考える際に重要なのは、更新頻度とタイミングです。
たとえば、多くの人が毎日欠かさず3回の食事と1回の睡眠をとっていますが、それと同じように、自分のコミュニケーションが「受け手」の生活リズムにどう組み込まれるかを十分に考える必要があります。
そのためには、既存ユーザーとのコミュニケーションにおいて、「丁寧さ」が必要不可欠です。プッシュ型のコミュニケーションでもプル型のコミュニケーションでも、「受け手」にネガティブな感情を抱かせてしまえば、すべてが終わってしまいます。適切なタイミングを見計らわないと、逆効果になってしまうのです。
たとえば、「おっさん」という言葉は、特定の年齢や性別を侮辱していると容易にとらえられうる言葉であり、批判の的になりやすい単語。言葉の強さに甘えてプッシュ型のコミュニケーションで使いたがる人もいますが、当の「おっさん」にとっては最悪の言葉選びといえます。このようなプッシュをされたら、そのメディアには二度と「受け手」から接触なんてしようと思わないでしょう。
プル型のコミュニケーションにおいても、「丁寧さ」を欠く例はあふれています。「受け手」がなんらかの課題を抱え、検索をして情報が欲しいなとたどりついたコンテンツがあったとします。いざそのコンテンツ内容を受け取ろうとしても、様々な機能が邪魔をする。そんなページが増えていると思いませんか?
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- 新規の「受け手」向け企画に必要なスキル「第一印象力」と、それをどこで手に入れたか
- コミュニケーションは相手を知って、わかってもらって、離さないこと
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