知ってもらう前に、あなたの「価値」を言語化するべき―メディアコミュニケーションにおけるブランドとは―
コミュニケーションプランナーの松浦シゲキです。
今回はニュースレター第1号「真の意味で『コミュニケーションについて考えられた』コンテンツとはどんなものか」で触れた、「受け手の課題解決における純粋想起相手となる」ことを目的とするブランドコミュニケーションについて話したいと思います。
ブランドの定義とは
ブランドを辞書で引くと「商標」「銘柄」といった意味が出てきますが、これだけでは抽象的な概念で、「受け手」とのコミュニケーションを考えるには不十分です。私は、以下の図をいつも念頭に置いています。以前お世話になった、株式会社えとじや代表取締役でマーケターの岡本晋介さんのブログ記事「極意の(^_^)フレームワーク ~4.ブランドってひとなんです」で示されているものです。
詳しい説明は是非当該ブログの一連のシリーズを読んでいただければと思いますが、これらの体現が大事だと思ってます。
1. ひとを「Senses/Heart/Mind/Soulモデル」で捉えること(極意第1回)
2. それをもとに、きちんと深読みし、理解すること(極意第2回)
4. ブランドを「Senses/Heart/Mind/Soulモデル」で捉えること(極意第4回)
5. ひととブランド(極意第5回)
私なりに要点を抽出すると、「受け手」の行動を考える際には、感覚(Senses)・こころ(Heart)・あたま(Mind)・たましい(Soul)の4つの要素を理解し、深読みすることが重要だということですね。
「受け手」は
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感覚で刺激を受けとり、こころで印象を決める
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あたまで論理的に考え、たましいの価値観などと照らし合わせて判断する
というプロセスでコンテンツを受容します。そして、これらの要素の間には必ずしも明確な因果関係はありません。「作り手」は、「受け手」の言動だけでなく、表情や所有物なども観察して深読みしながら、「受け手」を多角的に理解していくことが大切だと言えます。
そして、ブランド側も同様に、感覚、こころ、あたま、たましいを戦略的に考えてデザインし、ターゲットとブランドのそれぞれの要素が響きあう関係性を目指すことが、強いブランドを作る鍵になるのだと私は思っています。
メディアコミュニケーションにおけるブランドコミュニケーションの重要性
「作り手」にとってのブランドコミュニケーションの目的は、「受け手」がなにかしらの課題に直面した際に、真っ先に思い浮かべる存在となることです。例えば、メディアのグロースに悩んでいる時や、プラットフォームを通じたコミュニケーション設計に悩んだ時に、私(=「松浦シゲキ」というブランド)を思い出して貰えるかどうか。そう、このニュースレターの執筆も、実は私自身によるブランドコミュニケーションの一環と言えます。
こういう言い方もできます。文脈(コンテキスト)を構築することで、「作り手」という器(パッケージ)を「受け手」(ユーザー)に直接信頼してもらう。そのためには、たましいや、こころ、あたま、感覚、ふるまいといった多くの要素と、その組み合わせにリーチすることが必要となります。
またブランドコミュニケーションは、前回までに説明したサーチコミュニケーションとソーシャルコミュニケーションの両方に関わります。サーチコミュニケーションでは、ユーザーが能動的に情報を探す際に、真っ先に思い浮かべてもらえるかどうかが重要です。ソーシャルコミュニケーションでは、井戸端会議のような場で話題になった際に、信頼できる人物として認識してもらえるかどうかが鍵となります。
つまり、ソーシャルコミュニケーションもサーチコミュニケーションも、実現するためには前提条件として、ブランドコミュニケーションが重要なのです。
ブランドコミュニケーションにおいて大切な3要素
ブランドコミュニケーションにおいて最も重要なことは、「作り手」自身が持つ「信頼の文脈」の可視化です。これは以下の三つの要素から成り立ちます。
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識別 ブランドが「受け手」に明確に認識されることが重要です。そのために、ブランドの特徴や独自性を際立たせ、他のブランドと差別化を図ることが識別の要素です。
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価値 ブランドが提供する情報やコンテンツが、「受け手」にとって価値があると認識されることが重要です。「このブランドが保持している情報は価値がある」と「受け手」に感じてもらうことが価値の要素です。
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品質 ブランドが信頼できる情報源として認識されることが必要です。「このブランドが提供する情報は、正確で信頼に値する」「このブランドならば安心の情報元である」という認識を持たれることが品質の要素です。
これらの要素を満たすことが、ブランドによる文脈の体現と言えます。「受け手」に対して信頼されているかどうかを言語化できるかどうかが、ブランドコミュニケーションの大きなポイントです。
実際に、「受け手」はどのような順でブランドコミュニケーションを辿るでしょうか。
たとえば松浦シゲキであれば、「メディアコンサルタント・コミュニケーションプランナー」として識別されるかどうか、です。私を以前から知っている人からすればその時点で識別は済んでいますし、識別がまだできてない人は、まずは検索するでしょう。この時に、同時に品質も価値も探されます。もし、検索しても関連情報が出てこなければ、識別もなにもありません。
そして、情報が出てきたとしても、松浦シゲキが「メディアコンサルタント・コミュニケーションプランナー」としての価値を持っているかどうか、その価値が検索結果として確認できる状態かどうか。最後に、松浦シゲキがそれらの価値を、具体的にどう実践しているかが可視化され、品質が担保されているかどうか。
この例では、私はプロフィールページが重要だと思います。ありがたいことに、私には誰かが作ってくれたWikipediaのページがあるので、そこに書かれている内容がある程度の識別・価値・品質を表しているとも言えますが、自分のブランドなのですから、メインとなる情報開示は自分で行うべきだと私は考えます。Wikipediaはルールとして、本人が執筆することはできませんしね。
参考までに、私のプロフィールページをご確認ください。
プロフィールページを作った後は、「検算」が必要です。「受け手」の視点に立って、識別・価値・品質の観点から、コミュニケーション設計を見直しましょう。「受け手」のニーズや課題を深く理解し、それに寄り添って対話するような姿勢になっていますか? 自分の価値を示すことに気を取られて、「受け手」の潜在的な「感覚」「たましい」「こころ」「センス」を無視していませんか?
「受け手」の視点を持ちながら、信頼を構築し、維持することで、ビジネスに繋がるブランドコミュニケーションを実現することが目指されるべきです。
まずは、自分の価値を見極めること
さて、「受け手」から見たブランドコミュニケーションは「識別→価値・品質」の順で進行することを述べました。しかし、「作り手」がブランドコミュニケーションを実現するための手順は異なります。
まずは「作り手」としての自分の、【信頼の文脈】における「受け手」からみた価値を見極めることです。識別してもらうための露出を増やすことよりも、価値の文脈の設計が先です。第2回で「新規の「受け手」向け企画に必要なスキルと、それをどこで手に入れたか」という章を書きましたが、私はこうした経験を通して価値を認識した上で、識別作りにいそしみました。