コンテンツSEOって言うな、サーチコミュニケーションって言おう

私たちは検索エンジンのために仕事をしているのではないですよという意味で
松浦シゲキ 2024.07.05
読者限定

はじめに

コミュニケーションプランナーの松浦シゲキです。これまで5回にわたり、メディア・コミュニケーションの本質と実践について探ってきました。Vol.1 では「受け手」「伝え手」「作り手」というフレームワークを紹介し、コミュニケーションの基本構造を説明しました。

*   ブランドコミュニケーション

    *   受け手の課題解決における純粋想起相手となる

*   サーチコミュニケーション

    *   受け手が能動的に情報を取得する

*   ソーシャルコミュニケーション

    *   受け手が受動的に情報を取得する

Vol.3ではブランドコミュニケーションの重要性を強調し、「識別」「価値」「品質」という3つの要素がブランドを形成する上で重要であることを説明しました。

そしてVol.5では「ソーシャルコミュニケーション」における話題になるコンテンツを生み出すための、「3つの縁(血縁、地縁、知縁)」フレームワークを紹介しました。

今回は、これまでの内容を踏まえつつ、「サーチコミュニケーション」に焦点を当てていきます。この概念は、一般的に行われている「コンテンツSEO」の実践を包含しつつ、より広い視点でユーザーとの対話を捉えるものです。しかし実務において、「サーチコミュニケーションに最適化したコンテンツを作ろう」という本来の方向性が、しばしば「コンテンツSEOをしっかりやろう」という技術的な側面に単純化されてしまう傾向があります。

そこで私は、敢えて「サーチコミュニケーション」という言葉を使い続けることの重要性を感じています。なぜそう考えるのか、そしてこの概念をどのように実践していくべきなのかを詳しく解説します。

この記事を通じて、読者の皆さんが「サーチコミュニケーション」をより深く理解し、実際のメディア戦略に活かせるようになることを目指します。「検索」を単なるテクニカルな作業ではなく、ユーザーとの対話の機会として捉え直すことで、より効果的なコミュニケーション戦略を構築できるはずです。

私たちは検索エンジンのために仕事をしているのではない

私は、インターネットにはじめて触れた1996年以降、ほぼ毎日必ずなにかしらインターネットで検索しています。そして、お仕事としてウェブの仕事に関わり出した2002年以降「検索エンジン最適化(SEO)」を意識しなかったことはありません。特に、WIRED.jp、ハフポスト日本版などパブリッシャー側のディレクションを担当していたときは、検索流入数を毎日確認していました。

SEOはサイトや記事ページに技術的なチューニングを施す「テクニカルSEO」と、コンテンツそのものの内容や構造を調整して検索にかかりやすくする「コンテンツSEO」にわかれていきました。ただ私は、ここに来て実務においてSEO本来の意味や目的が曖昧になってしまっていることで、問題が起きているのではないかと思うのです。ですので私は、より本質を捉えた「サーチコミュニケーション」という言葉を普段使うようにしています。

問題があるのは、「コンテンツSEO」の方です。この言葉は、SEOのためにコンテンツを作成するという印象を与えがちです。つまり、作り手が、人間ではなく、アルゴリズムのために書くという誤解を招く可能性があるのです。私たちは検索エンジンのために仕事をしているのですか? 違うはずです。作り手や伝え手の、本来の目的は検索エンジンを通じて、情報を求めている人々とコンテンツを繋げることにあります。

私は「サーチコミュニケーション」という言葉を使って、この本質的な目的をより適切に表現したいのです。「サーチ(検索)」は、情報を能動的に探しているユーザーの行動を示し、「コミュニケーション」は、そのユーザーと情報提供者との間の対話を意味します。つまり、「検索するユーザーとの対話」という本質的な部分を強調したいのです。

ここで重要なのは、「サーチコミュニケーション」はGoogle検索に限定されるものではないということです。例えば、YouTubeやXやInstagram、さらにはAmazonやレシピサイトの検索機能など、ユーザーが能動的に情報を探す場面は多岐にわたります。これらすべてが「サーチコミュニケーション」の対象となります。

Vol.1で述べたように、サーチコミュニケーションはインターネット以前から存在していました。百科事典を引いたり、図書館で本を探したり、詳しい人に聞いたりすることも、広義の「サーチコミュニケーション」と言えるでしょう。あるジャンルに特化して言うならば、観光案内所もそうだと言えます。インターネットの登場により、この行為がより容易になり、範囲も広がったのです。

「サーチコミュニケーション」という言葉を使うことで、以下のような重要な視点が明確になります。

  • ユーザー中心の思考:検索エンジンではなく、情報を求めているユーザーを中心に考えることができます。

  • 双方向性の認識:単なる情報提供ではなく、ユーザーとの対話を意識することができます。

  • 多様な検索チャネルの考慮:Googleなどの検索エンジン以外の、InstagramやTikTok、YouTubeなど多様な情報検索手段も視野に入れることができます。

  • 長期的な関係構築:一時的なランキング向上ではなく、ユーザーとの継続的な関係構築を目指すことができます。

また、「サーチコミュニケーション」は、Vol.3で説明したブランドコミュニケーションの「識別」「価値」「品質」という3要素とも密接に関連しています。検索結果で適切に識別されること、価値ある情報を提供すること、そして高品質なコンテンツを維持することが、効果的なサーチコミュニケーションには不可欠なのです。

さらに、Vol.5で紹介した「3つの縁(血縁、地縁、知縁)」フレームワークの観点からも、「サーチコミュニケーション」は重要です。特に「知縁」、つまり共通の興味や関心を持つ人々とのつながりを形成する上で、サーチコミュニケーションは重要な役割を果たします。なぜかというと、血縁と地縁は受動的にその縁が形成されますが、知縁は能動の結果として形成される縁だからです(誘われて入る受動的な形成も中にはありますが)。

結論として、「サーチコミュニケーション」という言葉を使うことで、我々は単なるSEO技術の適用を超えて、ユーザーとの真の対話を目指すことができます。それは、ユーザーのニーズを深く理解し、適切な情報を提供し、そして長期的な信頼関係を築くことを意味します。これこそが、デジタル時代における効果的なコミュニケーションの本質なのです。

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続きは、5589文字あります。
  • 「サーチコミュニケーション」成功のための3つのステップ
  • 余談:サーチコミュニケーションはGoogleの検索結果生成AIで死滅するか?
  • 「サーチコミュニケーション」はユーザーとの対話である

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